選好の記録化と共有

選好の記録化と共有

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身体能力、認知機能の障害により、話すことが難しい場合であっても、さまざまな形でその人の選好(Preferences:好き・嫌い・快・不快の表現や表情、姿勢、視線等、その人から滲み出るもの)が表現される場合があります。

目の前の人の意図的な「選好」、意図的ではない「選好」に基づく最善の解釈をしていくためには、みんなでいかに情報収集し、共有できるのかが重要です。

さらに言えば、それを蓄積、更新していくことも不可欠です。

「選好の記録化と共有」は、「コミュニケーションの困難な方の意思決定支援って何をどうすればよいの?」の問いと要望に応じることを目指して、ディーキン大学(メルボルン、オーストラリア)の言語聴覚士であるワトソン教授(Watson, J.)が取り組んでいた実践などを参照しながら、SDM-Japanが開発、研修プログラムとして構成しました。

「選好」って?

「好き・嫌い」のことだと思ってください。英語では preferences(プレファランス)と言います。

言葉や指差しなどではっきりと示される「好き・嫌い」だけでなく、快・不快の表情、じっと見たり、近づいたり手を伸ばしたりしたり、逆に逃げようとするなど、本人が意識して表現していないけれど「好き・嫌い」を表出している本人からの情報も、ここでは選好に含めて考えることにします。

すると、言葉のある人も無い人も、とても多くの人が選好を表していることになりますね。

障害者権利条約では「選好」が重要であると言っています。

障害者権利条約について国連・障害者権利委員会の一般的意見1号では、これからは「最善の利益」原則ではなく「意思と選好の最善の解釈」原則に基づいて本人意思尊重をしなければならないと主張しています。

 (【意思と選好の解釈】と他の原則との相違)

これまでの歴史の中で、「あなたのためを思って」「良かれと思って」本人意思が蔑ろにされたことがどれだけたくさんあったでしょう。障害者権利委員会はこの過去を振り返り、本人からの意思と選好を用いましょうと強調しているのです。

ただし選好情報は周囲の人にとって、どのように受け取られるかがはっきりしないこともあります。そこで、本人にとっての最善の解釈に基づいて好き・嫌いを判断しようとしているのですね。

選好は「収集」「蓄積」「共有」「更新」でできている

選好はひと目見て分かるとは限りません。むしろ複数の人が情報を持ち寄って、「やはりこの人は***がすごく好きなんだね」のように、時間をかけて理解していきます。

だから選好情報は記録が大切ですし、さらにその情報を収集し、蓄積し、共有し、そして更新していくことで意味を持つことはお分かりでしょう。

(収集・共有・蓄積・更新!)

上述のワトソン教授やその仲間の研究者は、選好を表出する人(本人)の動画を何度も撮って、みんなで見るということを繰り返しています。私たちも、現場の支援者と一緒に動画を見ることで、気づかなかった本人の選好を見出してハッとすることがあります。

「そんな記録なんて面倒」と言う人もいるかもしれません。「私は記録や作文を書くのが苦手だから…」と尻込みする人もいるでしょう。私たちも記録作文コンテストをしたいわけではありません。それよりも、そのように利用者さんを気にかけることで、改めて他の人と「Aさんが~~~だったね!」と立ち話でも良いから話し合うこと→つまり「共有」できることが多くなれば、そのほうが大切だと思います。

「選好の記録化と共有」研修プログラムでは、このような視点から意思決定支援を考え、実践につなげていくための案内をしていきます。

研修ではどんなことがわかるの?

□なぜ「選好」を記録し、「共有」する必要があるのかがわかります。

□本人、利用者から表現される、好き・嫌いや思いを大切にしながら、支援を考えていくやり方がわかります。

□本人、利用者が表現した「選好」を、日頃の関わりの中で活かしていく際の考え方を実例なども通じて学ぶことができます。

□本人を取り巻く周囲の人が、「選好」をどう共有していくかを考える機会を提供します。

研修でどんなことするの?

1)講義…ここに書いたことを詳しく説明します。 

2)好き嫌いを考えるワーク…実際に好き嫌いを振り返ってみましょう。

3)仮想記録から選好について考えるワーク…新人職員が書いた日報(仮)を見ながら、どう表現したり書き表わせば収集・蓄積・共有・更新できる記録になるか、検討してみましょう。

★)事例検討…通常の研修では(1)~(3)までを取り上げて、入口の紹介をします。

  さらに実践に繋ぎたい人は事例検討会を設けましょう。

  そして職員間での選好の共有ができる職場づくりや、「あなたをもっと知りたい」の気持ちを育みながら本人の望み(wish)を大切にした支援へと具体化させていきましょう。

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…ここから先は、「選好」に興味を持ったあなただけにお伝えします。

選好を共有するとどんなことが起こるか?の例です。

 →下記事例のタイトルをクリックしてください。

  ・Bさんの例

  ・Cさんの例

実は、実際にやってみると、記録も大事だけど、共有する中からその人の思いに気づきあうことの大切さが分かってきたりします。そして、その人の課題や問題点ではなく、ポジティブなところに視点を変えることの意味が理解されてくるみたいですよ。

研修のお申し込み、お問い合わせは、研修・講師の依頼 問い合わせのページからお願いいたします。

Posted by sdm-japan